秋刀魚の歌

 9月30日 明日から10月になります。
明日からは値上げラッシュですね。 今日、スーパーで秋刀魚が一尾 98円 で売っていました。高いのか?安いのか?わからないですが、買ってみました。

少し小ぶりですね。昔は一尾食べるのに、結構お腹もいっぱいになった気がしますが、今日の秋刀魚は、あっという間に食べれてしまいました。


ふと「秋刀魚の歌」という詩を思いだしました。


秋刀魚 秋刀魚 秋刀魚苦いかしょっぱいか…


佐藤春夫  秋刀魚の歌 
あはれ 秋風よ
情〔こころ〕あらば伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉〔ゆふげ〕に ひとり
さんまを食〔くら〕ひて
思ひにふける と。


さんま、さんま
そが上に青き蜜柑の酸〔す〕をしたたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。
そのならひをあやしみてなつかしみて女は
いくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。
あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児〔こ〕は
小さき箸〔はし〕をあやつりなやみつつ
父ならぬ男にさんまの腸〔はら〕をくれむと言ふにあらずや。


あはれ 秋風よ
汝〔なれ〕こそは見つらめ
世のつねならぬかの団欒〔まどゐ〕を。
いかに 秋風よ いとせめて
証〔あかし〕せよ かの一ときの団欒ゆめに非〔あら〕ずと。


あはれ 秋風よ
情あらば伝へてよ、
夫を失はざりし妻と
父を失はざりし幼児〔おさなご〕とに伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食ひて
涙をながす と。


さんま、さんま
さんま苦いか塩つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。

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